「社会に開かれた教育課程」とは
平成29年に改訂された中学校学習指導要領と平成30年に改訂された高等学校学習指導要領では、これから到来する予測がきわめて難しい不確定な要素の多い社会で、児童・生徒が主体的に生きていくために必要資質・能力を育むことを目指している。この資質・能力の育成に関わっては「より良い学校教育を通じてより良い社会を創るという目標を学校と社会が共有し、連携・協働」する点で、「社会に開かれた教育課程」が平成29-30年改訂の学習指導要領の重要な理念の一つとなっている。
これからの社会における人々のあるべき姿は2016(平成28)年の中央教育審議会答申(「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について」)によれば、予測できない社会の変化等に受け身で対処するのではなく、これに主体的に向き合い、関わり合い、その過程で自らの可能性を発揮し、よりよい社会と幸福な人生の作り手になることが児童・生徒に求められる。
上記中央教育審議会答申では、社会に開かれた教育課程が以下の3点から述べられた。
①社会や世界の状況を幅広く視野に入れ、よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創るという目標を持ち、教育課程を介してその目標を社会と共有していくこと。
②これからの社会を創り出していく子供たちが、社会や世界に向き合い関わり自らの人生を切り拓いていくために求められる 資質・能力とは何かを、教育課程において明確化し育んでいくこと。
③教育課程の実施に当たって、地域の人的·物的資源を活用したり、放課後や土曜日等を活用した社会教育との連携を図ったりし、学校教育を学校内に閉じずに、その目指すところを社会と共有・連携しながら実現させること。
また平成29年・30年の学習指導要領では「会に開かれた教育課程」をつぎのように記している。
教育課程を通して、これからの時代に求められる教育を実現していくためには、よりよい学校教育を通してよりよい社会を創るという理念を学校と社会とが共有し、それぞれの学校において、必要な学習内容をどのように学び、どのような資質・能力を身に付けられるようにするのかを教育課程において明確にしながら、社会との連携及び協働によりその実現を図っていくという、社会に開かれた教育課程の実現が重要となる。
「社会に開かれた教育課程」の具体化
「社会に開かれた教育課程」の表現にある「社会」とはどのような社会を想定しているのだろうか。これは、2030年以降の将来の社会という側面と、連携・協同の対象としての地域社会という側面の2つが考えられている。これと関わって、よりよい社会を創るという理念の学校と社会における共有を考えてみると、 学校で育むべき資質・能力は、学校教育のみならず家庭や地域社会との関わりで育まなければならない点に注意しなければならない。具体的には地域の住民や保護者がや教育課程や学校づくりの理解を深め、学校や社会が連携・協働してよりよいものにしていくという当事者意識を高めることでもある。そこで期待されているのが、コミュニティ・スクールや地域学校協働活動なのである。